この章は第1章
『娘。道(ムスメドウ) モーニング娘。の軌跡Ⅰ~プラチナ期を迎える迄~』
及び第2章
『娘。道(ムスメドウ) モーニング娘。の軌跡Ⅱ~プラチナ期の矛盾~』
に続く第3章である。
ここでは、史上最大の変革をスタートさせ結成15周年を迎えた激動の2年間を感動のエピソード等を織り交ぜながら紹介する。

新たな旅立ちへの準備(2011年)

・激動の時代を救う小さな開拓者たち


2011年幕開け!
『Hello! Project 2011 WINTER 〜歓迎新鮮まつり〜』開催
(2011年1月2日~1月23日 3都市20公演)
の初日に9期メンバーが発表された。

2011年1月2日 9期メンバー加入
譜久村聖・生田衣梨奈・鞘師里保・鈴木香音
加入時点で譜久村は中学2年生、生田は中学1年生、鞘師、鈴木は小学6年生であり、最年長の高橋と最年少の鞘師、鈴木とは一回り違いの同じ干支である。
譜久村は、モーニング娘。史上初のハロプロ研修生からの内部昇格、鞘師はダンス歴10年、生田も器械体操経験者で身体能力が高く、即戦力重視の採用である。

3人が卒業し5人になったモーニング娘。ではあったが、この公演で、他のユニットを圧倒する完成度の高いパフォーマンスを見せ付け、ファンを安心させた。
更に4人の新メンバーお披露目も重なり、新たな期待を抱いたファンだったが、2011年1月9日の公演でリーダーの高橋愛の秋ツアーでの卒業が発表され、会場全体が落胆と驚きの渦でどよめきだった。

しかし、モーニング娘。にとってこの高橋の卒業は、昨年の亀井達の卒業の延長線上にある単なる通過点なのだ。
こうして、モーニング娘。は、新たなステージへ上る為の第1歩を踏み出したのであった。
尚、高橋の卒業を受けてサブリーダーの新垣里沙が7代目リーダーになる事も発表されている。

45th『まじですかスカ!』4月6日リリース
大震災の影響でリリースが3週間ほど遅れる。9期にとっては加入直後の新曲作りに挑む事になった。
9期の幼い声が金属音となり、暫く忘れていた賑やかで楽しい作品となる。完成度は高く無いのだが、楽曲にも恵まれ、新たな期待感を煽った。


新垣里沙と田中れいな

ここで、後に新メンバーに大きな影響を与える事になる2人のメンバーについて触れておきます。

新垣は、加入以前モーニング娘。の大ファンであり、加入後もその意識は変わらない。
憧れの先輩である安倍を崇拝し、モーニング娘。への思い入れはメンバー1である。
性格は照れ屋で積極的に人に近寄り直ぐに周りに溶け込む様な社交性はあまり無い。
モーニング娘。の経験を積んでからは、規律、統一に厳しい。せっかちで常に時計を見て時間を気にしている。
仕事に関する事での主張は的確に言葉にして意思を伝えるが、自分自身の事についてはあまり表面に出さず、内に秘めるタイプで、ストイックに自分を追い詰めるので自然とプロ意識が高くなる。

田中は、自分に関わる事は、仕事、プライベート問わず包み隠さず主義主張をする。多少危険な言葉を使ってしまうが、裏の無い正直者である。
他人については無関心で、命令や指示される事を嫌う。本質は社交的なのだが、猜疑心が強く、人の間に壁を作ってしまう。その壁を気にせず接してくる人に対しては受け入れるが、群れを嫌う。
加入当初からプロ意識が強い。当初は人に指摘される事を嫌う為の防御策であったかも知れない。

さて、この2人だが、似ている所も似ていない所も極端である。
田中の加入当初から3年程は似ている所が活かされ、近い関係で有ったが、徐々に確執が表面化し、2010年春過ぎから一気に距離が遠のいてしまう。

新メンバー9期初陣

『モーニング娘。コンサートツアー2011春 新創世記 ファンタジーDX 〜9期メンを迎えて〜』(2011年4月3日~6月26日 全国12都市29公演)

本来は3月19日~5月15日の32公演を予定したが、3月11日の大震災の影響を受け、変則開催となった。

進展しない稽古

即戦力メンバーが多い9期とは言え、やはりプラチナメンバーとの格差は大きすぎた。
レベルを下げても完成度は期待できないと言う事もあり、コンサート内容も意外とハードルが高かった。
一番の問題は稽古に取り組むスタンスが出来ていない事だった。個々の練習を済ませ合同練習に移っても足並みが揃わない。何度も合同練習から外される9期に先輩及びスタッフも苛立ちを隠せない。
そんな中、光井が嫌われ役を買って厳しく後輩の意識指導に当たった。また、ダンスの先生は9期から離れ、新垣がダンスを指導する事になる。道重も付き添い、高橋もフォローする。それでもコンサート開催が危ぶまれる状態が続いた。
これはチームの危機であり、自分自身の危機でもあると考え、いよいよ田中が動き出した。他人に積極的に介入しないスタンスを曲げて、田中も9期指導に当たった。
この先輩達の指導方法は今までとは明らかに違っていた。従来の先輩は、常に先生やスタッフ側に立ち後輩を指導したが、今回は皆、9期側に立って一緒に苦労した。
これこそ、チーム高橋が築き上げて来た新しいスタンスなのだ。
その成果は、この苦しい環境の中で孤立させず、悩み焦る9期をスクスクと成長させ、個々の持っているキャラを早い段階で表面化させた。更に先輩が同じ立場になる事で、急激にチームが纏まったのである。
ザ☆ピースの黄金期メンバーの下で孤立した5期、そして10年近く経過した今回プラチナメンバーの下で伸びやかに育つ9期にこのブランドの歴史を感じたエピソードである。

こうして、全員で高いハードルを越え、4月3日大宮で初日を迎えた。

新曲『まじですかスカ!』、『Fantasyが始まる』でコンサートはスタートした。
この初日を見たファンは、不安と期待というそれまで描いてきた世界とのレベルの違いを感じただろう。モーニング娘。はファンを置き去り、遥か遠くで余裕で手招きしている様な感覚を味わったに違いない。それ程新生モーニング娘。は纏まっていた。
この9期メンバーの成長は何なのだろうか?

コンサート全体を通して見れば先輩5人だけのパフォーマンスが多く、葛藤の傷口は見えたが、それにしても、歴代の新人の初陣でこれ程頼もしい姿を見た事は無かった。
MCでも自然体で無邪気にキャラを出す9期は、間違い無く重要な戦力を担っていた。

コンサート中盤では『Moonlight night 〜月夜の晩だよ〜』でベテラン高橋、新垣に混ざり鞘師がスーパーダンスバージョンのパフォーマンスを披露。歴代ハロプロメンバーでもダンス最上位の先輩2人に見劣りする事無く、素晴らしいダンスパフォーマンスを展開した。高橋、新垣が放つ圧倒的な気合いに鋭い反応を見せる鞘師の姿に鳥肌がたったファンも多いだろう。鞘師のソロダンスシーンでは場内から大歓声が上がる、このコンサートの名シーンであり、鞘師が次期センターポジションである事を知らしめたシーンである。

この時点で9期メンバーに本当のプロ意識が身に付いていたとは思わない。ただ、先輩を信頼し、チームに溶け込んだ事で、チームメンバーとしての自覚を感じとり、堂々と表現する事が出来たのだろう。そしてそのシーンを目撃したファンは、この4人の類まれなる素質とモチベーションを感じ取ったのである。
なんと、このツアー期間中に10期オーディション開催が発表された。攻め寄せる時の流れの早さにどう対応して良いか分からないメンバーとファンであった。


メンバーに自覚と覚悟を与えた高橋愛

夏のハロープロコンサート、ハワイFCツアー、46thシングル『Oniy you』リリース、47thシングル『この地球の平和を本気で願ってるんだよ!』のレコーディング、12thアルバム『12、スマート』のレコーディング等を経由し、いよいよ高橋愛の卒業公演ツアーを迎えた。
残念だったのは、光井、鞘師が相次ぐ怪我で現場を離れた。鞘師は秋ツアーから戻ったが光井においては、完全復帰する事はなかった。

『モーニング娘。コンサートツアー2011秋 愛 BELIEVE 〜高橋愛 卒業記念スペシャル〜』
(2011年9月3日~9月30日 4都市10公演)
高橋愛の在籍10年を全うしたいという希望やその後の高橋のスケジュールを考慮し、史上最短期間の開催となる。

まずは、このコンサート期間中にリリースされ、コンサートでも披露した47thシングル『この地球の平和を本気で願ってるんだよ!』とカップリング(両A面扱い)曲『彼と一緒にお店がしたい!』に触れておく。

この両A面シングル、『この地球~』では従来通り高橋、田中をメインに要所で新垣、そして次期センター候補の鞘師で作品を進行するのだが、『彼と一緒~』では高橋を後ろに下げ、初めて道重をセンターポジションに立たせメインを担当させた。
道重は、不安定な音質を流れに乗せる事が出来るメンバーであるがシングルでメインを担当させたのには驚かされた。それよりも、しっかり作品全体を道重ワールドに引き込み、モーニング娘。の名作品に仕上げた事に驚愕する。
こんな凄いメンバーが、チームの中で一番自信が無いと言っているのだから、このグループの底力を感じた。高橋卒業後の自覚からか、実はこの年の春ツアーでも見せ場が多く、全体を牽引していたのである。パフォーマンスの表現力はトップレベルで有ったが歌唱力も一気に成長した道重である。

そんな道重に代表されるように、このコンサートでは、あのプラチナ期を引っ張った高橋の卒業を迎え、メンバー全員の自覚を感じとれた。
高橋愛に「安心して卒業して貰いたい」と真っ先に語ったのは新人9期だった。
サブリーダー新垣は勿論、一匹オオカミの田中もチームを引っ張った。光井が最終日まで合流できなかったのが残念であり、光井の苦悩に掛ける言葉は出ない。

卒業企画公演は2日間にわたり武道館で行われ、卒業したプラチナの同志亀井や沢山のOGが招待席に顔を連ねた。その中には明石家さんま等、著名人も多く、高橋愛の親しまれる人格、そして皆の期待感が覗われた。
また卒業した同期の紺野、小川も高橋、新垣と共にステージに並び、この5期愛情物語に会場から暖かい感動の声援が送られた。
メンバーにもファンにも、来るべき時代を覚悟したかの様な独特な意気込みを感じた雰囲気ではあったが、湿っぽさの無い爽やかな卒業イベントになった。

尚2日間の卒業企画の初日に10期加入が発表された。

2011年9月29日 10期メンバー加入
飯窪春菜・石田亜佑美・佐藤優樹・工藤遥


飯窪は高校2年生、石田は中学3年生、佐藤、工藤は小学6年生である。
工藤は譜久村に続き、ハロプロ研修生からの昇格組、石田は地方アイドルのバックダンサーを努めたダンス経験者で能力が高い。ここでも即戦力が重視され、クオリティーを追求するスタンスが明らかになった。

10期はそのままこの卒業2日間に同行し、『友』で先輩メンバーに混ざりパフォーマンスしたり高橋卒業への贈る言葉でもコメントしており、加入初日からその存在感をアピールした。

2011年9月30日 5期高橋愛卒業


苦悩から生まれた信頼(向き合ったダブルエンジン)

ミュージカル『リボーン〜命のオーディション〜』開催(2011年10月8日~10月17日 全労災ホール/スペース・ゼロにて17公演)

このミュージカルは当初、モーニング娘。からは新垣、光井と9期が出演する予定だったっが、光井の怪我の回復が遅れ、光井に代わり、急遽田中が代役を務める事になった。
稽古は先に開演された高橋卒業公演ツアー中にも実施されていた。
既に春のコンサートツアーやその他色々な仕事も経験し一回り成長した9期だったが、ミュージカルと言う、芝居を経験するのは初めてだった。
この稽古で、9期に全くプロ意識が身についていない事が露呈される。学業との両立という環境の中で全く稽古に集中できず、吸収力、応用力の悪さも表面化した。
春ツアーの稽古中に続くこの緊急事態は本番寸前まで続き、新垣、田中及び他の出演者やスタッフを不安にさせてしまっていた。
ここで、冷戦中の新垣と田中が協力して、この9期に対し厳しく指導する事になった。
進展しない稽古が続く中、稽古後も新垣と田中はとことん相談し合い、この体制の立て直しを図った。稽古後9期を呼び出し親身に指導する新垣に逆らう譜久村を田中は厳しく叱りつけた。
9期が今まで味わった事のない、プロの厳しさを学んだ瞬間である。
新垣と田中の仕事に対するスタンス、ステージに向かうポテンシャルは常に同じ方向性である。だからパフォーマンスではこのダブルエンジンがステージを凄い勢いで牽引して来たのである。言わばプロ集団であるモーニング娘。の核である。
光井には申し訳ないが、早い段階での2人が近い距離で9期の前に立ったこの環境は9期の財産になった。
いつしか、この環境は冷戦中の新垣、田中の距離を一気に縮めていた。元々同じポテンシャルのこの2人が近づくのにそれ程の障害は無かったのだが、その切欠が思いがけない所に転がり込んできたという事だ。
また、このミュージカルを通して、田中は新垣のチームに対する思い入れやリーダーとしてのスタンス、更に演技に関する実力とプロとしてのスタンスを学んだ。
「ガキさんともっと昔から話せば良かった」とつくづく田中が語っていた。

さてこのミュージカルのストーリーは、亡くなった偉人たちが新たな偉人へと生まれ変わるために命のオーディションを受ける、しかし1人だけ落ちなければならない、という話である。
田中が稽古期間中ブログで稽古が思うように進まず、本番も危うい様な事を言っていたので、不安を感じて見にいったのだが、冒頭は舞台装置も地味で学芸会モード!先入観も影響してかその場を立ち去ろうか?等とも考えるような立ちあがりだった。
しかし、このミュージカル途中から思わぬ展開となる。芝居を観て、これ程涙した経験は無い。実はこの芝居、演者にとっては非常に難しいハイレベルな作品であり、その中で新垣と田中2人が作り上げる世界観と感動は恐らく墓の中まで自分は持っていくだろう。

新垣の集中力、演技力、田中の表現力、歌唱力は別格でプロの中のプロを感じた。
このポテンシャルと9期及び他の出演者の差は歴然であり、新人9期も凄い経験をしたものだと、逆に同情したくなった。
この作品の作家や演出家も揃って、この2人が作り上げた舞台であった事を千秋楽で語っていた。

2011年は、9カ月と言う短期間に8人が新規加入という前代未聞の大量採用となった。
これは、いよいよ新創成期に向けての本格的準備を開始した事を物語っていた。
王道復権に向けて、この小さな開拓者達の時代が近づいて来たのだ。


プラチナの継承(2012年)

・破壊から生まれる創造~原点回帰~


更に加速する時の流れ

正月恒例『Hello! Project 2012 WINTER ハロ☆プロ天国』開催
(2012年1月2日~1月22日 3都市19公演)

前年の暮れにハロプロ合同ユニットモベキマスイベントで新加入の10期も合流し、いよいよ本格的なチーム新垣のスタートを切るこの公演初日、なんと春ツアー最終日での新垣の卒業が発表された。
高橋同様確かに通過点なのかも知れ無い。しかし、息つく暇を与えずここまで進行するとは恐らく誰もが予測していなかった事だろう。
発表を聞いた場内は一瞬凍り付いた様な状況になった。

48thシングル『ピョコピョコ ウルトラ』リリース
10期加入後初のシングルリリースであった。ひよこの着ぐるみを着せられてパフォーマンスするモーニング娘。を観て、つい1年程前まで存在していたプラチナ期を惜しんだファンも多いだろう。史上最強の8人は4人となり、8人が新人となって着ぐるみを来て現われたのだ。
しかし、よくよくこのパフォーマンスを観察すると要所要所にはレベルの高いダンスも入っており、学芸会でも無い、宴会芸でもない、独特なキャラクタ性を持ち合わせて新たな世界観を作り上げているのだ。特に驚くのは新垣、道重、田中の成人トリオがしっかりハマっている事だ。ある意味このパフォーマンス集団の力量、芸域の広さに驚かされる瞬間でもあった。

そしてそれはその後リリースされた49th『恋愛ハンター』で証明された。新垣最後のシングルであるこの作品は、9期10期のパフォーマンスレベルの高さを表面化した作品である。



『モーニング娘。コンサートツアー2012春 〜ウルトラスマート〜』開催
(2012年2月18日~5月13日 全国13都市35公演)
尚、ツアー終盤の5月4日に光井の疲労骨折の完治が望めない事から、新垣と同時に卒業する事が緊急発表された。

(新垣里沙・光井愛佳卒業スペシャルコンサートとして5月18日 武道館開催)

9期10期の関係

このコンサートではメンバー12人中8人が新人で構成されているので、この時点での8人に触れながらこのコンサートの状況を記載する。
プラチナ時代以降縦社会の垣根を低くし横社会を優先しているが、この9期10期だけの世界においては殆ど垣根が無い。スタッフも先輩メンバーもファンもそう扱ってしまう傾向がある中、本人達もそれが当たり前のようになっている。
それがとても纏まりが良く、小さなプラチナ期を感じさせる。
また、9期が10期と先輩との間のクッションになった為、10期は短期間でチームに溶け込む事が出来た。
更に9期にはハロプロ経験者の譜久村、10期にもハロプロ経験者工藤が存在し、稽古の仕方やステージの作り方の手本が存在している。ダンス技術においても、高い技術を持つ鞘師と石田がそれぞれ存在する。
確かにこの4人、プラチナメンバーには及ばないが、他の同期からすれば、かなり高い位置に存在している訳で、そこに照準を合わせて来るため、やたら、現場に馴染むのが早いのである。
特に鞘師の牽引力は強く、鞘師自体、吸収力が早いので、下から押し上げて来るスピードが早くなっている。
気が付けば、プラチナメンバー4人がハイレベルで牽引するチームの中で機能できる対応力を身に付けていたのである。
しかし、そんな中でもやはり9期と10期の実力差が見える所もあり、細かい所まで観察するととても興味深いコンサートとなった。

全体的には、若手の成長力、卒業する新垣の情熱やポテンシャルが高くチームへの影響力が高い新垣の卒業を受けた6期の自覚も手伝い、ハイレベルで展開した。
9期10期の幼い金属音等、歌唱力の低下を無視すれば全盛期のパフォーマンスより遥かにレベルの高いコンサートになった。

2012年5月18日 5期新垣里沙、8期光井愛佳卒業

卒業SPに関しては、高橋に続く要の新垣卒業に対し、残留組の覚悟に高橋卒業時以上のものを感じ、卒業の新垣、光井を送り出す淋しさよりも、個々の決意の力強さが印象深い雰囲気だった。

史上最長10年9カ月在籍と言う輝かしい経歴を背負って華々しい卒業を迎えた新垣の陰に隠れた光井の卒業に哀愁を感じたファンも多かったのではないだろうか?
いや、結局、それ以上に長い間チームを陰で支え続けた実力者新垣の晴れ舞台に感動したファンが勝っていたのだろう。

この卒業当日、道重の次期リーダーが発表され、同時に11期オーディション開催の発表がされた。


チーム道重始動!


『モーニング娘。誕生15周年記念コンサートツアー2012秋 〜カラフルキャラクター〜』
(2012年9月15日~12月15日 全国13都市37公演)

チーム道重本格始動!
コンサート開催前日の公開ゲネプロにて11期加入が発表される。

2012年9月15日 11期メンバー加入
小田さくら
中学2年生で9期鞘師、鈴木と同学年。スマイレージ2期落選組でハロプロ研修生を経て内部昇格する。
加入時点での歌唱力は歴代トップクラスである。

順風満帆でチーム道重が始動するが、11月18日の公演で翌年春ツアー最終日での田中の卒業が発表される。
進行中であった田中のバンド結成に伴うオーディションにてバンドメンバーが決定し、田中は、卒業後バンド活動に専念する事になった。

パフォーマンスリーダー

50th『One・Two・Three/The 摩天楼ショー/両A面』(2012年7月4日)
51th『ワクテカ Take a chance』(2012年10月10日)

前作『恋愛ハンター』から、両A面を含み立て続けに4曲、ダンサブルナンバーをリリースする。その中でこのチームの形が見えて来た。
この秋ツアーでは、そんな新たなモーニング娘。の進化が垣間見れる。

鞘師がチームの核となり機能する。歌やダンスの上手さとかセンターに立っている!という事ではなく、後ろに下がれば前を押し上げ、サイドに回れば中をフォローする。ポジションによって周りのバランスを取りながら機能し、常にチームをコントロールしているのが鞘師なのだ。逆に言えば、そんな鞘師を基準にして周りのメンバーが機能している。
元々パフォーマンスに対する身体能力に優れている9期10期なので、基準が確立する事で全員が絶妙に対応してくるのである。

石田が抜群のキレと鋭い表現力で躍動感を出しながら、軸である鞘師に絡んでくる。
そこに鈴木、佐藤、工藤が若いエネルギーで敏速に反応する。
幼いが故に勢いやスピード一辺倒になりそうな気配だが、そうはならない。
譜久村がリズムを確かめるように緩やかにリズムに乗り道重から学ぶしなやかな表現力で妖艶さを出す。
生田は無表情、無気力な感覚で自然にリズムに乗り、クールに淡々と踊る。
この2人が暴走を食い止め溜めを作る。
更に、飯窪は身体特性を活かし、バックで大きくソフトな腕の振りでパフォーマンスをワイドに魅せる。
そして、道重と田中がそんな8人に対し、手を叩き正確なリズムを伝え、声を掛け、気合いを入れ煽るようなコーチの役目として補助輪となり、徐々にその補助輪を外し掛けている。
このチームの魅力は、容姿やスタイルもレベルを決して合わせない統一しない。そんなバラバラな個性が集合したり離れながら万華鏡の模様のように曲線的に変化する。
ある時はテトリスのように様々な図形が向きを変え、並び、平らになるという直線的な変化をみせる事である。

課題は、高橋、新垣、亀井、田中が中心となった歌、ユニゾンの軸。
新垣、田中、亀井が担当した煽り。
抜群な表現力と絶妙なタイミングで飛び込む道重のインパクト!
新垣が担ったパフォーマンスを含むステージにおける仕切り、進行、組み立て(コンサートマスター)
等、まだまだ沢山あるが、しっかりとしたスタンスが出来た事と高いパフォーマンス性は十分評価できるコンサートである。

最後のプラチナ指導者

「私達もスタッフも9期10期を一括りで扱う傾向がある。9期10期自体もそうなっている。でも10期よりも9期が優れている所が沢山ある。9期は自信を持つ事。10期は近い所に手本となる先輩が居てくれる事に感謝し、敬う事が必要」
道重が後輩に指導した言葉である。
縦社会の垣根を低くし風通しの良いチームを作って来たが、規律を重んじた新垣が抜け、伝統の縦社会が崩壊する危険を察知した道重が手綱を引き締めたシーンである。

プラチナ期の先輩は、後輩に対し、同じ立ち位置に付き添いモーニングの伝統をしっかり伝えて来た。後輩達もそれをどんどん吸収し結果を出している。
しかし、この伝統の重さや磨き続ける難しさを後輩達は理解していない。
先輩としての威厳を保ち、後輩にしっかり伝え育てる事。後輩は先輩を敬い、それを引き継ぎ磨き守る事。垣根を下げる事と無くす事は全く違う事。仲の良い、5期新垣、6期亀井、道重もその違いを葛藤しながらも守って来た。
本当の課題は歌唱力等では無い。経験や練習だけでは成長できない重要な基礎だからこそ、今の時点で厳しく教える事が必要なのだ。
プラチナ最後の指導者である道重が、残り少ない時間でこの事を深く伝授すると確信するシーンであった。

王道復権

新人8人が一気に加入した話題性に何となく世間も反応しつつある。
TVでの出演機会も一時期よりは増え、新メンバー達は、無邪気に「前へ前へ」をアピールしている。
今のモーニング娘。自体が新人なのだ。
これまでプライドと実力だけで逆風に立ち向かい基盤を残し伝統を伝えてきた。
それがこれからのモーニング娘。の最大な武器になる。
その武器を片手に、いよいよこの小さな開拓者達が王道復権に向けて新たな戦いの旅に出発したのである。
私も、引き続きその旅について行く事にする。